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花匂う

花匂う

著者:山本周五郎

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内容紹介

山本周五郎は「文学には“純”も“不純”もなく、“大衆”も“少数”もない。ただ“よい小説”と“わるい小説”があるばかりだ」を信念とし、普遍妥当性をもつ人間像の造形を生涯の目的とした作家で、時代小説を中心に沢山の作品を残しています。
その作風は今なお古臭さを感じさせず、繊細に描かれた人の心の機微や人情に、思わず笑わされたり、胸を打たれたりする魅力に溢れています。

あらすじ

直弥は初めて眠れない夜というものを経験した。矢部信一郎と庄田多津との縁談がきまったと聞かされた直後から、それは始まった。信一郎は直弥の親友であり、多津は隣屋敷の娘で幼馴染である。最初はこの縁談を素直に喜んだのだが、気がかりだったのは信一郎の持つ秘密であった。かつて自分の家にいた小間使いと過ちを犯した信一郎には、今三つになる男の子がいるのだ。
結婚してから多津がそのことを知ったらどれだけ傷付くだろうか……それを思うと直弥は胸が痛むのであった。
十日余り悩んだ末に、直弥は多津を河正という料理屋に呼び出して、そこで話そうと決心した。
当日、多津はなかなか来なかった。待っている最中に直弥はふいに低く呻き、眼をつむりながら片手で目を押さえた。今この時になって、ようやく直哉は自分の気持ちに気付いた。それは自分が長く、そして深く、多津を愛していたことであった。もはや彼女に話すことはできないと直弥は煩悶するが、そうしている間に多津はやって来たのであった……


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・録音音声の中には、今日においては不適切と思われる表現がありますが、音源または原文の歴史的価値を尊重し、改変を加えずそのままとしました。
・当時の録音状況や、原盤の保管状態の不備などにより、一部にお聴き苦しい箇所があることをご了承下さい。