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桃の井戸

桃の井戸

著者:山本周五郎

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内容紹介

山本周五郎は「文学には“純”も“不純”もなく、“大衆”も“少数”もない。ただ“よい小説”と“わるい小説”があるばかりだ」を信念とし、普遍妥当性をもつ人間像の造形を生涯の目的とした作家で、時代小説を中心に沢山の作品を残しています。
その作風は今なお古臭さを感じさせず、繊細に描かれた人の心の機微や人情に、思わず笑わされたり、胸を打たれたりする魅力に溢れています。

あらすじ

私にとって、長橋のおばあさまの存在は大きなものであり、訃報を聞いたときにはせめてお口へお水を取って差し上げたかったと泣けて仕方が無かった。
おばあさまとの出会いは父が勤役を解かれ、住み慣れた江戸を離れて国許へ帰ることになったことがきっかけであった。帰郷の日が決まってから、私は一日許しを得て、湖月亭の大人へお別れに上がった。
幸い相客もなく、大人も大層喜んでくれた。そして、その折に、
「そういえば御国許には長橋千鶴という人がいる筈だ。私が京にいた頃からの雅友で、会ったことは無いが、十年の余も文の往来が絶えない。おいでになったらぜひ訪ねてごらんなさい……」
そう仰ってくれたのだった。
そして江戸を離れて国許に着き、五日ほどたった時分に私は荷ほどきをしながら、江戸を去ってしまったという悲しい気持ちに襲われた。そんな時にわざわざうちへ足を運んで会いに来てくれたのが、長橋のおばあさまこと、千鶴女なのであった……


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・当時の録音状況や、原盤の保管状態の不備などにより、一部にお聴き苦しい箇所があることをご了承下さい。