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知っておきたい 日本の漢詩 第四回 博学無比の人――林羅山

知っておきたい 日本の漢詩 第四回 博学無比の人――林羅山

著者:宇野直人

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内容紹介

漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地が幻想的でもあり、夢のようでもある「ファンタスティック」な漢詩。

時代背景や作者の境遇を交えた色彩豊かな漢詩の魅力に溢れる講義です。


このシリーズは日本の漢詩について、さまざまの立場で歴史の舞台に登場した人々にスポットをあて、その作品と人生を解説する、という方式で進めてまいります。

日本人の伝統詩歌としては、漢詩・短歌・俳句があげられるでしょう。この三形式のなかでは、親しまれた期間の長さにおいても、創作の歴史の長さにおいても、漢詩が抜きんでています。何しろ日本人は既に飛鳥時代、つまり七世紀後半ごろから、漢詩を「読む」だけではなく、「自分で作る」という段階に入っていました。以来、今日まで千三百年以上にわたり、漢詩は日本人の心を表す形式として親しまれているのです。

漢詩に表れた日本人の心、その特質は何かと言えば、それは「公と正義の感覚」ということになります。花鳥風月や、男女の心の機微は、漢詩では最も重要な関心事にはなりません。そうではなく、社会がどうあるべきか、それを目指す中で個人はどうふるまうべきかを模索し、その考察の結果やそれに伴うさまざまの感慨を表現する、それが漢詩の本道です。

このシリーズによって、そのような漢詩の魅力と奥深さを少しでもお伝えすることができれば幸いです。

第四回 博学無比の人――林羅山
林羅山(1583~1657)は、江戸初期の儒学者。幕府に仕え、朱子学興隆の基礎を確立した大儒です。京都の生まれ。幼時より読書を好み、はじめ建仁寺で儒・仏の学を修めますが、やがて朱子学に心酔、23歳の時、江戸幕府の顧問となりました。以後、秀忠・家光・家綱に仕え、幕政を補佐します。子孫は代々大学頭となり、幕府の学問の支柱となりました。羅山は儒学のみならず、国文学・史学・地理・兵法・本草学(薬学)、神道などに造詣が深く、膨大な著作をのこしています。詩も五千首近くをのこし、多様な題材、また絶句・律詩などの形式ごとに作風がきちんと区別されていること、さらに緻密な対句や、意外な茶目っ気を感じさせる句づくりなど、強い印象を与えられます。新興の韻文形式「詞(ツー)」にも手練(てだ)れの技を発揮し、恋に悩む女官の心情を唯美的に描いています。

収録作品

壬戌の秋 長州の下関に過り 因つて安徳帝の遺像を拝す 丙午の春 又 之を拝す 既に唐律の一絶を作つて以て焉を弔す 宋の陸秀夫幼帝を抱くは 二位の尼の為す所と何ぞ異ならん 彼は丈夫なり 此も丈夫なり 唯だ男子婦人の異有るのみ 又『大学』を読むと否との異有るのみ

月前の花を見る

夜船 桑名を渡る

癸巳 日光紀行

更漏子 加藤敬義斎の「秋思」に和す

シリーズ一覧

知っておきたい 日本の漢詩 第一回 儒臣の本懐――菅原道真
知っておきたい 日本の漢詩 第二回 五山の詩魂――富士山を詠む
知っておきたい 日本の漢詩 第三回 風狂の彼方に――一休宗純
知っておきたい 日本の漢詩 第四回 博学無比の人――林羅山
知っておきたい 日本の漢詩 第五回 儒教再審――荻生徂徠
知っておきたい 日本の漢詩 第六回 和漢交響――与謝蕪村
知っておきたい 日本の漢詩 第七回 やがて かなしき――狂詩の世界
知っておきたい 日本の漢詩 第八回 涙の手まり唄――良寛
知っておきたい 日本の漢詩 第九回 燃ゆる心を――頼山陽
知っておきたい 日本の漢詩 第十回 この道ひとすじに――広瀬淡窓
知っておきたい 日本の漢詩 第十一回 士族の誇り――西郷隆盛
知っておきたい 日本の漢詩 第十二回 安らぎを求めて――夏目漱石


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