早すぎた埋葬 再生時間:56分51秒 無料再生時間: 提供:パンローリング |
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内容紹介
まだ生きているあいだに埋葬されるいうことは、疑いもなく、かつてこの世の人間の運命の上に落ちてきた、極度の苦痛の中でも、もっとも恐ろしいものである。しかもそれが今までにしばしば、大変しばしば、起ったということは、否定しがたい事実である。どこで生が終わり、どこで死が始まるのか…。
生と死とを分かつ境界はどう見ても影のような漠然としたものである。
我々は、生活力のすべての外見的の機能がまったく停止し、しかもその停止は正しく言えば単に中止にすぎないような、病気のあることを知っている。それはただこの理解しがたい機関が一時的に休止したにすぎない。ある期間がたてば、なにか眼に見えない神秘的な力がふたたび魔術の歯車を動かし、それから魔法の車輪を動かす。“銀の紐”は永久に解けたのではなく、また“金の盞”は償いがたいほど砕けたのでもないのだ。だがいったいそのあいだ霊魂はどこにあったのか…?
しかし、こういう結果を生まなければならないというような
―― 生活力の中止ということが周知のように起ることは、当然、早すぎる埋葬ということを時々ひき起すにちがいないというような
―― 先験的(ア・プリオリ)の必然的結論は別として、我々はこのような埋葬が実際にたいへん多く、今までに起こったことを
証明できる医学上の、また普通の、経験の直接の証拠を持っているのである。もし必要ならば私は十分に信ずべき例をすぐに百も挙げることができるくらいである。
そのたいへん有名な、そしてあなた方のうちある人々の記憶にはまだ新しいある出来事が、あまり古くはないころ、ボルティモアの付近の市で起こり、痛ましい強烈な驚きを広く世人に与えたことがある。
著名の弁護士で国会議員である名望ある一市民の妻が、突然、不思議な病気にかかり、その病気には医師もすっかり悩まされたのであった。彼女は非常に苦しんでから死んだ、あるいは死んだと思われた。実際、誰も彼女が本当には死ななかったのではなかろうかと疑ってみなかったし、疑うべき理由もなかった。彼女はあらゆる普通の死の外観をすべて示していた。顔は普通のとおりしまって落ちくぼんだ輪郭になった。唇も大理石のように蒼白かった。眼は光沢がなかった。温みはもう少しもなかった。脈搏は止んでいた。3日間、その身体は埋葬されずに保存されたが、そのあいだに石のように硬くなった。手短かに言えば、死体が急速に腐爛するように想像されたので、葬儀は急いで行われたのであった。
※ 本作品は発表時の時代背景により、今日の社会では一般的でなく、不適切と思われる表現が含まれている箇所がございます。しかし作品のオリジナル性を最大限に尊重し、当時のまま忠実に再現することを優先いたしました。