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梶井基次郎 「Kの昇天」

梶井基次郎 「Kの昇天」

著者:梶井基次郎

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内容紹介

1926年に同人誌『青空』にて発表された耽美的名作。月光の下、影と自己との境目を見失った若者が遂げた生と死の物語。

お手紙によりますと、あなたはK君の溺死について、それが過失だったろうか、自殺だったろうか、自殺ならば、それが何に原因しているのだろう、あるいは不治の病をはかなんで死んだのではなかろうかと様さまに思い悩んでいられるようであります。

そしてわずか一ひと月ほどの間に、あの療養地のN海岸で偶然にも、K君と相識ったというような、一面識もない私にお手紙をくださるようになったのだと思います。

私はあなたのお手紙ではじめてK君の彼地かのちでの溺死を知ったのです。

私はたいそうおどろきました。と同時に「K君はとうとう月世界へ行った」と思ったのです。

どうして私がそんな奇異なことを思ったか、それを私は今ここでお話しようと思っています。

それはあるいはK君の死の謎を解く一つの鍵であるかも知れないと思うからです。

著者情報

梶井 基次郎(かじいもとじろう)

1901年(明治34年)~1932年(昭和7年)。大阪市西区生まれ。近代日本文学の古典的存在とされる。高校時代エンジニアを目指していたが、その後文学に傾倒し東京帝国大学文学部英文科に進学。1925年(大正14年)、同人誌「青空」を刊行し、代表作「檸檬」を発表。その作品は、自身の病気を題材にすることも多く、私的小説的な作品が多い。1932年(昭和7年)、肺結核のため死去。享年31歳。命日の3月24日は、その代表作から、 「檸檬忌」 (れもんき)と呼ばれている。


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