火星の運河 朗読:西村健志 再生時間:18分45秒 無料再生時間: 提供:パンローリング |
再生速度
- x0.5
- x0.75
- x1
- x1.25
- x1.5
- x2
- x3
- x4
会員登録をすれば、全作品が聴き放題。入会月は無料です。
すでに会員登録済みの方は、こちらからログインして下さい。
内容紹介
又あすこへ来たなという、寒い様な魅力が私をおののかせた。私は果てのない森の中を歩き続けていた。音も匂いも触覚さえもが私の身体から蒸発してしまっている。
全てが死滅してしまったかのような世界の中で、私はえも言われぬ恐怖を覚える。
一体何年の間、或いは何十年の間、私はそこを歩き続けているのだろうか?歩き始めたのは昨日であったか、或いは何十年も前だったか?……それさえ曖昧だった。
ふと気が付くと私の周囲に薄明かりが漂い始めていた。目の前の森にようやく切れ間が見えた。
「出口だ!」
そう思った私であったが、そこが出口ではなく森の真ん中だったのだと気付く。沼の岸に立った時、華やかな色彩がある訳でなく、単調な色どりを映しているに過ぎないはずなのに、「私」はその景色のあまりの美しさに眩暈を覚えていた……