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内容紹介
山本周五郎は「文学には“純”も“不純”もなく、“大衆”も“少数”もない。ただ“よい小説”と“わるい小説”があるばかりだ」を信念とし、普遍妥当性をもつ人間像の造形を生涯の目的とした作家で、時代小説を中心に沢山の作品を残しています。その作風は今なお古臭さを感じさせず、繊細に描かれた人の心の機微や人情に、思わず笑わされたり、胸を打たれたりする魅力に溢れています。
あらすじ
茂兵衛は勝浦の橋七というかなり大きな網元の三男だった。元は鯨突きになろうとしていたが、悪い仲間が出来て賭け事に溺れ、すっかり性格を荒ませた。家を飛び出した彼は、五年経って憔悴しきった面持ちで帰って来た。その時に彼の世話をしたのが、阿いまだった。不器量ながらも気性が優しく、良く働くと評判の娘だった。引きこもっていた茂兵衛だったが、阿いまにだけは心を開くようになり、過去の過ちを懺悔していた。「阿いまは綺麗な頬をしているな」
阿いまはある日、ふと茂兵衛が口にしたこの言葉を忘れられずにいた。
夫婦になった二人は潮の激しい「舟入れず」の入江を漁場にする計画を実現すべく懸命に働いたが、三年の間その努力は実らず、ついに茂兵衛はさじを投げた。
「三年のあいだ夢をみたんだ、つまらない夢だった」
明日ここを引き払うという茂兵衛の目の前で、阿いまは熱された鏝を自らの頬に当てようとした。必死に制止した茂兵衛は、阿いまがこのような行いに及んだ真意を知る……。