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泉鏡花 「怪談女の輪」

泉鏡花 「怪談女の輪」

著者:泉鏡花

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内容紹介

一七歳、秋のはじめ――

部屋は四畳、明窓の障子の向こうには二畳ばかりの池がある。何百年もの古邸であるから、鼠だらけ、埃だらけ、草だらけ。塾生と教師家族が住んでいる。

その夜は、塾で禁止されている小説をひっそりと読んでいた。すると、障子の向こうでぱらぱら…と音がした。耳を澄ますと、連続した調子で、ぱらぱら…


四五日後、風の黄昏時。家内には他に誰もいなかった。惡寒のために床に就いていると、枕元でばたばた…と音がする。頭を上げたが、誰が来たのでもなかった。

しばらくするとふたたび、しとしと…しとしと…

堪えられずに起き上がり、次の間、広間へと出た。

ほっと息をつき振り返ると、部屋の敷居をまたいで、薄紅のぼやけた絹に搦まって、蒼白い女の脚ばかりが歩行いて来た。

著者情報

泉鏡花(いずみ・きょうか)

1873年11月4日 - 1939年9月7日。金沢市下新町生れ。本名は鏡太郎。明治から昭和にかけて活躍した小説家。

尾崎紅葉に師事した。「夜行巡査」「外科室」で評価を得、「高野聖」で人気作家になる。

江戸文芸の影響を深くうけた怪奇趣味と特有のロマンティシズムで知られる。また近代における幻想文学の先駆者としても評価される。作品に「照葉狂言」「婦系図」「歌行燈」「夜叉ヶ池」「海神別荘」などがある。


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