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ラヴクラフト「冷気」

ラヴクラフト「冷気」

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内容紹介

ふと流れてくる「冷気」というものに必要以上の恐れを抱く男。寒さに対して人以上に震え、そして軽い寒気を感じるだけで吐き気を覚える。なぜこの男はこんな妙な癖を持ってしまったのか、これからその理由を、彼の人生の中でもっとも恐ろしいというその場面を、お話しよう。

雑誌の仕事を持ってはいるがお金のなかった彼は、下宿を探すうちにある建物へとたどり着いた。古くかびくさい匂いに満ちてはいるが、しのぎの部屋としては充分であった。もちろん、わずらわしい近所付き合いなども必要なかった。

住み始めて3週間ほど経った頃、上階から床にアンモニアのきつい匂いを放つ、妙な液体がぽたぽたと落ちてきていることに気がついた。上の部屋には、ムニョース先生という腕にいい医者が住んでいるという。

ある日、急な心臓発作に襲われた彼は、ムニョース先生の部屋へ初めて足を踏み入れた。その部屋は、6月の後半でかなり暑い日であったにも関わらず、とてもひんやりとしていた。

冷気のただよう部屋で、実験器具と薬品に囲まれたムニョース先生は、心臓がなくなっても、意志や意識があればいき続けられるのだと言う。

発作のすっかり治まった彼は、それからムニョース先生との付き合いを始めるのだが、しかし何週間も過ぎたある日、恐怖の中の恐怖と呼べる出来事が唐突にやってきた…

アパートの隣人たちが遭遇する恐ろしい出来事、そして衝撃の結末。奇才、H・P・ラヴクラフトが贈る、背筋も凍る恐怖のホラー掌編。

著者、翻訳者情報

著者: H・P・ラヴクラフト (Howard Phillips Lovecraft)

1890年8月20日─1937年3月15日。ロードアイランド州プロビデンス生まれ。アメリカの怪奇小説作家であり、SF的なホラー小説で有名である。「クトゥルー神話」(Cthulhu Mythos)という架空の神話大系を考え出し、怪奇幻想小説界に多大な影響を与えた。ラヴクラフトの作品は、潜在意識にある恐怖を描き出し、多くの人を惹きつけている。現在も世界中で彼の創造した邪神や宇宙的恐怖をモチーフにした作品が数多く作られ続けている。

翻訳者: 大久保ゆう (おおくぼ・ゆう)

1982年生まれ。高校1年時より翻訳を始め、以来、各種翻訳をクリエイティブコモンズライセンスにて広く提供しつづけ、個人・企業などで様々に 活用されている。現在は研究者として翻訳研究に携わるとともに、フリーランスの翻訳家・執筆家としても活動中。


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