50分でわかるヘンリー四世-シェイクスピアシリーズ16- 再生時間:48分44秒 無料再生時間: 提供:パンローリング |
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内容紹介
オーディオブック シェイクスピアシリーズ第十六弾読み聞かせでもなく、サウンドドラマでもない。オーディオブックならではの圧倒的な表現力。誰もが知っている“はず”のシェイクスピア作品をダイジェストにして続々お届けします。
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「ハル公、おれが戦場でぶっ倒れたら、上にまたがって防いでくれよな。それが友情ってもんだろう?
名誉? それがぐさりとしやがる。いざってとき、その名誉が自分を大けがさせたらどうするね?
なくした手足を治してくれるか? 痛み止めになるか?名誉は手当の名人か?
そんなのありゃしねえ。
じゃあ何だ名誉ってのは。言葉だ。なら名誉って言葉はなんなんだ? 何者だ名誉って。
……空気だ。結構なお勘定じゃねえか。
誰が名誉を持ってるよ。水曜日に死んだあの男か?名誉を実感してんのか? いいや。
名誉が耳に響いてるか? いいや。
なら感じないものか? その通り、死人にはな。
じゃあ生きてれば、名誉も生きてるってか?
んなこたあない。なぜか? 世間の悪口が殺すのよ。
だったら、おれは要らねえな。
名誉なんて、ほんの墓石の飾りじゃねえか。
これでおれの宗教ってのは、おしめえだ。」
ジョン王ののちに、イギリスでは、ヘンリー三世、エドワード一世、同二世、三世、リチャード二世と、五代に百年ほどの歳月を経て、ヘンリー四世の御代となった。
このヘンリー四世はリチャード二世の従弟に当たる方で、もとボーリンブルックとあだ名されていたが、優柔不断でお人好しの前の王が邪な家臣の言葉に左右されて失政を重ね、その上ヘンリー四世の追放中にその世襲の所領を没収したりしたため、彼はそれに怒り、王直々のアイルランド遠征の留守に乗じて、フランスから兵を率いて侵入し、リチャード二世を廃して自らイギリスの王位に昇ったのだった。
ところがこのような手段によって得られた栄誉は決して安泰なものではない。彼の不遇を哀れみ彼を助けて王位に昇らしめた人々は、ヘンリー四世がひとり高い位と多くの富とを独占してその功績を人に分かたず、ややもすれば先の助けを忘れて活躍した家臣をおろそかにする向きがあるのを見て、心ひそかに不満を抱き、国内にはなにとなく不穏な空気が漂っていた。
こうした風雲ただならぬ天下の形勢をよそに、ハル王子とあだ名された王太子ヘンリー・モンマスは日夜遊び呆けていた。
彼を取り巻く連中には勲爵士ジョン・フォルスタッフをはじめ、ポインズ、バードルフその他の悪友がいたが、なかでもこのフォルスタッフは特に異彩を放つ愉快な人物で、体はビール樽か羊毛袋のようにぶくぶくと太り、ちょっと歩くとすぐに息が切れて日向のバターの塊みたいにたらたら脂汗を流すくらい――年は五十を超えて六十に近いのだが、気は至って若く、酒を飲むことといったらまるで鯨のよう、食べることといったらまるで馬のよう、たいへん頓知が働いてしょっちゅう駄洒落と軽口を叩き、嘘を言うのは朝飯前で、いつも大言壮語しているが、それでいて実際は世にも珍しい臆病者――一口に言えば何の取り柄もない無益の存在だったが、いかにもあどけないその性格はあながちに憎むことのできない不思議な人物だった。
ハル王子はこんな連中に取り囲まれて、イーストチープの猪頭亭《ちょとうてい》という名前も卑しい妖しげな居酒屋を根城に、悪い遊びに日を送り、財布が軽くなるとときには街道に出て追いはぎを働くといった不良ぶり・・・。
内容項目
(1)ヘンリー四世 ・・・(2)ばか騒ぎ ・・・
(3)改心 ・・・
(4)決戦 ・・・
(5)手柄と名誉 ・・・
解説
「……あらよっと。まったくちくしょうめ。あのとき死んだふりして、死骸の偽物にならなけりゃあ、あの武者にむちゃむちゃにされてたにちげえねえ。
偽物? いいやウソだ、偽物にはなっちゃいねえ。
死ぬことこそ、偽物になるってことよ。
なぜって、命のない人間は、人間の偽物だからな。
ちっと死んだふりして、生き残ったってんなら、そいつは偽物でもなんでもねえ、ご立派な人間そのもの。
勇気の一等だいじなところは、見極めだ。その見極めどころのおかげで、おれは命拾い。」
英国史を扱ったシェイクスピア史劇のなかでも、一二を争う人気作(本作ではその第一部がメイン)。
イギリスの歴史を描いているものの史実とは異なるところももちろんあり、とりわけこの作品では実在しない〈フォルスタッフ〉が、喜劇史上でも屈指の人気キャラクタとして有名。
フォルスタッフはかっぷくよく背も図体もでかい老騎士で、痩躯の主人公ハル王子と対象的に描かれることが多く、
単純な悪者道化に留まらず、強くもあれば弱くもあり、若くもあれば老いてもいる、といった二面性を併せ持ち、愚賢・勇臆のみならず、正直者の嘘つき、死にながらも生きているという矛盾を孕みつつ、腰抜けに見えてもしたたかに生き延びる、どこか憎めない悪党でもある。
かたやハル王子は、うつけ者の振りをする嫡子という今ではよくある描き方だが、むしろその〈振り〉の巧さから、生真面目で熱い人物(今作ではホットスパー)よりも政治的に長けた人物として、庶民に近く親しみを抱かせて油断させつつ、それでいて権謀術数で人心を掌握できる有能な人物でもある。
コメディーとしての会話をのらりくらりと交わす言葉の裏側に、真実の言葉が隠されている。
編集者からひと言
本シリーズは、シェイクスピアの世界を判りやすいダイジェスト版として、楽しみながら手軽に知ることができます。→こんな人におすすめ
シェイクスピア作品に興味はあるが、全部読むのは面倒くさい
戯曲が中心なので、聴いた方が楽しめそう
著者情報
ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare)
英国の劇作家・詩人。1592年~1612年ごろまで劇作家として活躍。四大悲劇「ハムレット」、「マクベス」、「オセロ」、「リア王」をはじめ、「ロミオとジュリエット」、「ヴェニスの商人」、「夏の夜の夢」、「ジュリアス・シーザー」など多くの傑作を残す。Tokuboku Hirata's TALES FROM SHAKESPEARE: HENRY IV
edited by Yu Okubo
written by Tokuboku Hirata
Story Teller
横居 将Cast
西村 健志野口 晃
安田 卓史
桐原 伸明
あべ わき
豊岡 総仁
鷹生 唯空