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喧嘩

喧嘩

著者:中島敦

再生時間:23分6秒

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内容紹介

一切無駄のない、整えられた美しい文体が特徴の中島敦。 彼の作品は、漢文調の格調高い端正な文体とユーモラスに語る独特の文体とが巧みに使い分けられています。 学生の頃に「山月記」を読まれた方も多いのではないでしょうか。人が虎になってしまうという伝奇的な物語が、重厚な文体に不思議なリアリティを伴って描かれている様は、今も沢山の読者を引き付けて離しません。 また、『弟子』『李陵』といった作品に描かれている人間観や世界観、そして格調高く美しい文章を、呻吟しながら書いたのではなく、渾々と湧き出るように書いたところに、彼の天才作家としての真骨頂があるではないでしょうか。 代表作以外にも隠れた傑作が数多く収録されています。通勤や移動の合間にも、文学史上に輝く綺羅星のような作品に触れられる当オーディオブックは、きっと感性にも豊かに響く、意義深い時間を届けてくれることでしょう。

<作品冒頭>
おかねにとっては息子の貞吉が腹膜炎とかで、始終ぶらぶらして居るのがはがゆかった。 事実ねながら談笑して居る顔や言葉つきには少しも病人らしい所がなかっがからだ。 で、いつも貞吉のことから、此の家には喧嘩が起こるのであった。漁師の家に長男と生れたものが、こんなに遊んで居ては家が立って行くわけがない。 第一、死んだ貞吉の父親――おかねの亭主――にすまない。とこう、おかねは寝て居る貞吉に絶えずくりかえすのであった。 すると、それを聞いて貞吉の代わりに、妻のとりが腹を立てるのである。 病気のものは仕方がない。貞吉の代わりには自分がこして、毎日何処か、日雇に出て働いて居るではないか。病人にそうがみがみ言ってはますます病気を悪くするばかりだ。 けれども勝気なおかねには、この嫁の言葉も癪にさわった。とりが働くのを恩にきせられて居る様に思われたからであった……


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・録音音声の中には、今日においては不適切と思われる表現がありますが、音源または原文の歴史的価値を尊重し、改変を加えずそのままとしました。
・当時の録音状況や、原盤の保管状態の不備などにより、一部にお聴き苦しい箇所があることをご了承下さい。