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狼疾記
再生時間:1時間16分58秒
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内容紹介
スクリインの上では南洋土人の生活の実写がうつされていた。 眼の細い・唇の厚い・鼻のつぶれた土人の女たちが、腰にちょっと布片を捲いただけで、乳房をぶらぶらさせながら、前に置いた皿のようなものの中から、何か頻りにつまんで喰べている。米の飯らしい。丸裸の男の児が駈けて来る。彼も急いでその米をつまんで口に入れる。口一杯頬張りながら眩しそうに此方へ向けた顔には、眼の上と口の周囲とに膿み爛れた腫物が出来ている。男の児はまた向うをむいて喰べ始める。 それが消えて、祭か何かの賑かな場面に代る。どんどんどんどんと太鼓の音が遠くなり近くなりして聞える。対い合った男女の列が一斉に尻を振りながら、それに合わせて動き出す。砂地に照りつける熱帯の陽の強さは、画面の光の白さで、それとはっきり想像される。太鼓が響く。 乱暴な男声の合唱がそれに交って聞えて来る。尻が揺れ、腰に纏った布片がざわざわと揺れる。踊から少し離れた老人たちの中心に、酋長らしい男が胡坐をかいている。痩せた・顴骨の出た老人で、頸に珠数のような飾を幾つも着けている。 撮影されていることを意識してか、妙に落着の無い・蕃地での自信をすっかりなくしてしまったような眼付をして、踊を眺めている。時々思い出したように乱暴な飛躍と喚声と太鼓の強打とを伴うほか、いつまで経っても同じような単調な踊を、しょぼしょぼした目でじっと見詰めている……