知っておきたい 日本の漢詩 第三回 風狂の彼方に――一休宗純 再生時間:56分57秒 無料再生時間: 提供:パンローリング |
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内容紹介
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地が幻想的でもあり、夢のようでもある「ファンタスティック」な漢詩。時代背景や作者の境遇を交えた色彩豊かな漢詩の魅力に溢れる講義です。
このシリーズは日本の漢詩について、さまざまの立場で歴史の舞台に登場した人々にスポットをあて、その作品と人生を解説する、という方式で進めてまいります。
日本人の伝統詩歌としては、漢詩・短歌・俳句があげられるでしょう。この三形式のなかでは、親しまれた期間の長さにおいても、創作の歴史の長さにおいても、漢詩が抜きんでています。何しろ日本人は既に飛鳥時代、つまり七世紀後半ごろから、漢詩を「読む」だけではなく、「自分で作る」という段階に入っていました。以来、今日まで千三百年以上にわたり、漢詩は日本人の心を表す形式として親しまれているのです。
漢詩に表れた日本人の心、その特質は何かと言えば、それは「公と正義の感覚」ということになります。花鳥風月や、男女の心の機微は、漢詩では最も重要な関心事にはなりません。そうではなく、社会がどうあるべきか、それを目指す中で個人はどうふるまうべきかを模索し、その考察の結果やそれに伴うさまざまの感慨を表現する、それが漢詩の本道です。
このシリーズによって、そのような漢詩の魅力と奥深さを少しでもお伝えすることができれば幸いです。
第三回 風狂の彼方に――一休宗純
一休宗純(1394~1481)は、室町時代前期の禅僧(臨済宗)。狂雲子と号しました。京都の生まれで、父は後小松天皇(ごこまつてんのう)と伝えられます。室町幕府の権威が急速に衰えてゆく時代に成長し、尊王の立場から幕政を批判、また当時の禅宗の世俗化に強く反発し、本来の禅宗のあり方を模索しつづけました。生涯を通じて一定の寺に住せず、各地を行脚(あんぎゃ)して武士・町人たちと自由に交際、禅の普及に努めました。その奇才と奔放な言動は、多くの逸話を生んでいます。
一休は詩・連歌・書・画に秀でていましたが、ここでは彼の詩について、次の三つの側面から見てまいります。① 悟りを求める心を表現したもの、② 時の為政者や禅僧の堕落を批判したもの、③ 伴侶の森女(しんにょ)への深い愛情を告白したもの。
収録作品
自賛長門の春草
春衣にて花に宿る
無題
長禄庚辰八月晦日 大風洪水あり 衆人皆憂ふ 夜 遊宴歌吹の各有り 之を聞くに忍びず 偈を作つて以て慰むと云ふ
森公 輿に乗る
森公の深恩に謝するの願書
シリーズ一覧
知っておきたい 日本の漢詩 第一回 儒臣の本懐――菅原道真知っておきたい 日本の漢詩 第二回 五山の詩魂――富士山を詠む
知っておきたい 日本の漢詩 第三回 風狂の彼方に――一休宗純
知っておきたい 日本の漢詩 第四回 博学無比の人――林羅山
知っておきたい 日本の漢詩 第五回 儒教再審――荻生徂徠
知っておきたい 日本の漢詩 第六回 和漢交響――与謝蕪村
知っておきたい 日本の漢詩 第七回 やがて かなしき――狂詩の世界
知っておきたい 日本の漢詩 第八回 涙の手まり唄――良寛
知っておきたい 日本の漢詩 第九回 燃ゆる心を――頼山陽
知っておきたい 日本の漢詩 第十回 この道ひとすじに――広瀬淡窓
知っておきたい 日本の漢詩 第十一回 士族の誇り――西郷隆盛
知っておきたい 日本の漢詩 第十二回 安らぎを求めて――夏目漱石